舌で決まる?上下の顎の位置

全身に関係する顎の位置。顎の位置は何で決まってくるのでしょうか。

はじめに、顎の構造を見てみましょう。

顎の構造

まず、上顎の骨は、頭蓋骨のパーツの一部として固定されています。一方、下顎は主に咀嚼筋群という噛むための4つの筋肉で吊り下げられていて、ブランコのようになっています。下あごは固定されていないのですね。

次に、噛むという行為は、下顎が動くことで成り立っています。歯科では、「上の歯がまな板」「下の歯が包丁」というのはこのためです。

顎と歯の関係

今まで、上下の顎の位置は「歯」で決まると考えられてきました。しかし、そうではないことがわかってきました。

皆さんは今、歯を食いしばっていますか?

普段の生活の中でのほとんどの時間、上下の歯の間には隙間が空いている状態のはずです。これは安静位空隙(Free Way Space)といい、世界平均で2㎜程度の隙間です。上下の歯はいつも当たっているわけではないのです。

安静位空隙

顎の位置が歯で決まるのは、「ものを食べているとき」「食事をしているとき」しかありません。現代人が一回の食事で噛む動作を約600回とすると、1秒に1回噛む計算で1回の食事で歯が当たっている時間は約10分しかありません。3回の食事としても30分。この30分だけは上下の顎の位置は歯で決まっています。

しかし、残りの23時間30分の間、下顎は筋肉によってブランコのようにぶら下がっているのです。それでは、この23時間30分の間、顎の位置を決めているのはいったい何なのでしょうか。

顎の位置

実はそれが「舌」なのです。

「舌」によって、私たちの顎の位置は決められていたのです。

顎の位置がずれることの影響

下顎がブランコのように筋肉によってぶら下がっていることはわかりました。

それでは、筋肉によってぶら下がっている下顎の位置がずれると、いったいどんな弊害が生まれてくるのでしょうか。

クリニックを訪れる患者様の多くが、顎関節症や首のコリ・腰痛・肩こり・偏頭痛などの、いわゆる“不定愁訴“とよばれる“体の不調”を訴えられます。診察の中でわかってきたのは、こういった不定愁訴を訴えられる患者様の舌は、居場所が狭かったり、歯が当たっていたりと、舌にストレスがかかっているということです。舌ストレスによって身体に不調が現れるという因果関係が見えてきたのです。

舌にストレスがかかると、下の顎の位置が狂い、ドミノ現象によって頭頚部の筋肉を緊張させ、肩こり首のコリが起こるなど、連鎖的に体のいたるところに不調がでてくるのです。

舌ストレスが不定愁訴を起こす流れ

顎が小さい
アーチが小さい・歯が倒れる
舌の居場所が狭い(ストレス)
舌が押される(ストレス)
下あごの位置が狂う
頭頚部の筋肉が緊張
肩こりなど全身に不定愁訴